未明に流れてきたインタビューを目にして、毎日FRBの「金利予測図（ドット・プロット）」を凝視している人たちも一気に目が覚めたはずだ。

ホワイトハウス国家経済会議（NEC）委員長のケビン・ハセットが率直にこう言った。「もしFRBが今、向こう半年の金利計画を固定するなら、それは『無責任』だ」。彼の見立てでは、FRB議長の仕事は三つ——データを見る、政策を調整する、そして説明する。要するに、事前の“種明かし”は期待するな。その都度判断しながら進むのが筋だというわけだ。

この発言がなぜこれほどの破壊力を持つのか。ハセットはただの官僚ではない。市場では、彼がパウエルの後任としてFRB議長に就く最有力候補と広く見られている。今の彼の言葉は、そのまま今後の政策スタンスのシグナルなのだ。

市場の反応は速かった。アナリストの中には、この「データが物を言う」姿勢は予想よりタカ派寄りだと指摘し、トレーダーはすぐに来年の利下げ見込み幅を引き下げた。見ての通り、その影響力は伊達ではない。

もちろん、もう一人の有力候補ケビン・ウォーシュも注目リストにいる。彼はかつてFRBで働いた実務経験が豊富だ。この争いは、ある意味で「政治的感度」と「テクノクラート色」のせめぎ合いとも言える。

相場を追う私たちにとって、今回のハセットの発言は重要な注意喚起だ。インフレ指標はまだぶれており、景気の先行きも不透明。いま固定的な利下げパスに賭けるのはリスクが大きい。

これからのFRBの一挙手一投足は、彼の言う通り、毎月データで検証しながら一歩一歩進めることになるだろう。ゴールを当てに行くより、素直に毎回の経済データを追うべきだ。結局この市場では、データこそが最大の変数なのだから。