TON幣深度解析:Telegram生態的Web3基石

TONとは何か?プライベートセールからオープンソースコミュニティへの変貌

TON(The Open Network) の物語は2018年に始まった。当時Telegram創業者のDurov兄弟は、重要な問題に気づいた:既存のLayer 1ブロックチェーンの中で、Telegramの9億ユーザー規模を支えられるものはなかった。そこで彼らは自ら開発を決意し、その時点では「Telegram Open Network」と呼ばれていた。

このプロジェクトはプライベートセール段階で17億ドルを調達したが、その後大きな挫折を経験した。2019年、米国証券取引委員会(SEC)がTelegramに対して未登録証券の発行を訴え、長期の対立の末、Telegramは2020年に規制当局と和解し、同プロジェクトから撤退を余儀なくされ、1850万ドルの和解金を支払い、全てのプライベート資金を返還した。

転機が訪れたのは次のときだ:チーム撤退によるプロジェクトの頓挫を防ぐため、Telegramは流通可能なすべてのトークン(総供給量の98.55%)をスマートコントラクトに預け、世界中のユーザーにマイニングを開放した。この決定により、オープンソース開発者からなる独立チームNewTON(後にTON基金会に改名)が誕生し、プロジェクトの再生を引き継いだ。

現在、TONは真の分散型オープンソースプロジェクトへと進化し、独立したチームとコミュニティによって維持され、Telegram公式からの戦略的支援も受けている。

TONの技術的優位性:なぜ9億ユーザーを支えられるのか

多くのパブリックチェーンの中で、TONの最も重要な競争力は高スループットアーキテクチャにある。

TONは「メインチェーン(Masterchain)+ 複数のワークチェーン(Workchains)+ シャーディングチェーン(Shardchains)」という革新的な設計を採用し、理論上は2³²のワークチェーンをサポートでき、各ワークチェーンはさらに2⁶⁰のシャードに細分化可能だ。これにより、取引処理能力は毎秒数百万件に達し、Ethereumの15-30件/secを大きく上回る。

しかし、この性能の優位性はコストも伴う。検証者ノードは、SolanaやAptosなどの高性能パブリックチェーンと同様の先進的なハードウェアを必要とする。

もう一つの特徴は、独自開発の仮想マシンTVMだ。これはEthereumのEVMと互換性がなく、スマートコントラクトは専用言語FunCで記述される。これにより開発の難易度は上がるが、Ethereumエコシステムとの直接競争を避けることができる。

重要な突破口:Telegram公式内蔵ウォレット

2024年最大の転換点は、Telegram公式がTONウォレットをアプリに標準搭載したことだ。

これにより、9億を超えるTelegramユーザーは追加のインストールなしにWeb3エコシステムにアクセスできる。想像してみてほしい:チャット画面だけでトークン送金、DeFi参加、NFT購入が可能になる。これは従来のパブリックチェーンでは実現できなかったユーザー体験だ。

さらに重要なのは、Telegramが展開する「Stars」(アプリ内通貨)とTONの未来の統合だ。これにより、コンテンツクリエイターや開発者、プラットフォームに新たな経済モデルがもたらされる。チャンネル所有者はTelegram内で広告を出し、収益の100%を得ることができ、開発者はStarsをTONに換金できる。

TONエコシステムの爆発:ゲームからDeFiへ

過去1年、TONエコシステムは本格的な爆発を迎えた。

GameFiとソーシャル:Catizen(猫育成ゲーム)、Notcoin、Hamster Kombatなどのプロジェクトは、月間アクティブユーザー数が数百万に達し、「プレイして得る」低ハードルの特性を完璧に体現している。これらはTelegram内の軽量アプリであり、ユーザーはチャットを離れることなく遊べる。

DeFiエコシステム:Ston.fiやDeDust.ioは主要な分散型取引所(DEX)で、流動性マイニングやトークン交換などのサービスを提供。EVAA Protocolは超過担保ローンも可能だ。

決済とウォレット:Tonkeeperは最も人気の非カストディアルウォレットであり、@walletはTelegramに直接統合され、「Web3入口」の理念を体現している。

NFTとドメイン名:GetgemsはTONチェーン上の主要NFTマーケット。TON DNSは複雑なウォレットアドレスを【.ton】ドメインに簡略化できる。

これらはすべて、「TONは単なる金融インフラではなく、完全なアプリケーションエコシステムを構築している」という方向性を示している。

トークン経済モデルの落とし穴

元の供給量は50億TONだが、そのうちチーム保有は1.45%、残り98.55%はPoWで早期に掘り尽くされた。現在はPoSに移行し、年率インフレは約0.6%。

2025年12月時点の最新データ:

  • 現在価格:$1.47
  • 24時間変動:+1.03%
  • 流通時価総額:$3.60B
  • 流通供給量:24.5億枚
  • アドレス数:1.7億

ここで深刻な問題が浮上している:Top100アドレスの保有比率は91.64%、ビットコインの13.63%を大きく上回る集中度だ。

2023年、コミュニティの投票により171の非アクティブマイニングウォレット(合計持ち分は10.81億TON)が凍結されたが、根本的な解決策は未だ見えない。毎日の取引手数料の燃焼量は350-400枚程度で、50億の初期発行量に比べると微々たるものだ。

これはまさに「タイマー爆弾」のようなもので、早期の巨鯨が売り抜ければ、価格は大きく下落する可能性がある。

価格推移:0.41ドルから8.24ドルへ、その後調整

TONの価格動向は、Telegramとの連動性と高い変動性を反映している。

2021年8月に初めて分散型取引所に上場し、価格はわずか0.41ドルだった。その後、熊市の長期低迷期を経て、2022年は1.3-2.5ドルのレンジで推移。

2022年9月の大きな転機:Telegram公式がTONを正式にサポートし、Web3基盤として推奨したことだ。創始者のDurovも何度もTON技術を高く評価した。この公式後押しは即座に効果を発揮し、価格は着実に上昇を始めた。

2024年にはエコシステムの爆発(USDT統合やミニアプリの急増)により、6月には$8.24の最高値を記録。その後、2024年8月に創始者の逮捕事件が衝撃を与え、信頼が揺らぎ、価格は大きく調整された。2025年に入り、TONは調整局面に入り、現在は$1.47に戻っている。

全体として、最初の$0.41から現在の$1.47までの投資リターンは依然として顕著だ。

TONとイーサリアム/Solana:設計思想の根本的な違い

TONはその論理的な差異を明確に示している。

リソース支払いモデル:イーサリアムではユーザーが取引手数料を支払うが、TONではスマートコントラクト自体が費用を支払う。この仕組みは、ユーザーがコストを受動的に負担しなくて済む反面、コントラクトが十分なTONを持つ必要がある。残高が尽きると自動的に削除され、クリーンアップ機能となる。

非同期アーキテクチャ:TONのコントラクト呼び出しは非同期設計だ。コントラクトAがコントラクトBを呼び出すと、その呼び出しは即座に実行されず、未来のあるブロックで処理される。これにより高い拡張性を実現する一方、DeFiの開発は複雑化する。

インターネットコンピュータ(Internet Computer)も類似の設計を採用したが、結果的にDeFiエコシステムの発展は遅れている。TONコミュニティはこれを認識し、「大規模採用」(Mass Adoption)を重視している。

言い換えれば、TONの競争力は金融ではなく、支払い、ソーシャル、ゲームといった分野にある。これらはTelegramの強みと一致している。

TONの三つの投資方法

現物投資:トークンを直接購入

最もシンプルな方法は、主要な暗号資産取引所でTONの現物を買うことだ。手順は以下の通り。

  1. 信頼できる取引所に登録し、KYCを完了
  2. 銀行振込やステーブルコインで入金
  3. TON/USDTの取引ペアを検索し、市場価格または指値注文を出す
  4. 購入後、自分の管理下にあるウォレット(TonkeeperやTelegram内蔵ウォレット)に送金

対象者:長期保有を考える投資家。

コントラクト投資:レバレッジ取引

実際のトークンを保有したくない、価格変動を利用したい投資家は、CFDや取引所の先物を選択できる。

メリット:ロング・ショート可能、レバレッジ対応、手数料低い。

デメリット:レバレッジは損失拡大のリスクも伴う。

対象者:取引経験のある短期投資家。

エコシステム参加:ステーキングとDeFi

トークンを買う以外にも、次の方法でTONエコシステムに参加できる。

  • ステーキング:ノードにTONを預けて年利約5%のリターン
  • 流動性マイニング:DEXで流動性を提供し取引手数料を獲得
  • 借り入れ:EVAA Protocolなどのプロトコルで超過担保ローン

リスク注意:NFTやゲームの早期プロジェクトはリスクが高いため、慎重に参加を。

投資リスクと今後の課題

主要リスク

Telegram依存の過度な集中:TONの発展はTelegramと深く結びついており、Telegramの戦略変更や規制問題があれば、TONは大きな打撃を受ける。

トークンの集中度:Top100アドレスが91.64%を保有しており、売りが出れば価格は急落の可能性。コミュニティは非アクティブウォレット171個を凍結したが、根本的な解決策は未だ見えない。

規制の不確実性:通信と金融の深い連携は、世界各国の規制当局の注目を集める。各国の暗号資産政策は未だ変動中だ。

エコシステムの競争:SolanaやSuiなどの高性能チェーンはエコシステムが成熟し、開発者も多い。支払い分野では、TONはビットコインのライトニングネットワークやステーブルコインとも競合する。

今後の展望

方向性一:中央集権化の犠牲
コミュニティ投票により巨鯨ウォレットを永久凍結。これにより市場の売り圧力は軽減されるが、TONは「価値の保存」機能を失い、低価格で効率的な資産移動ツールに成り下がる。

方向性二:希釈メカニズムの導入
新規参加者に副トークン(STON)を配布したり、エアドロップを行ったりして、早期の巨鯨の影響を抑える。これにより一部の早期保有者は損をする可能性もあるが、より健全なエコシステムを目指す。

結論

TONとTelegramの連携は、Web2.5の潜在能力を大いに示しているが、早期のマイナーが大量に保有するトークンの問題は依然として懸念材料だ。分散化の理念とトークン分布の健全性のバランスをどう取るかが、TONの最大の課題だ。

技術面では、その能力は証明済みだ。アプリケーション面では、CatizenやTONウォレットのプリインストールなど、多くの実証例がある。真の試練は、「トークン集中度の問題を克服し、より多くの開発者とユーザーをエコシステムに引き込み、最終的に『大規模採用』を実現できるか」にかかっている。

今後12ヶ月の観察ポイントは、TONチェーンのアクティブユーザー数の増加、DeFiの総ロック額(TVL)の伸び、そしてトークン価格の安定上昇だ。これらの指標がTONの正しい軌道に乗っているかを示す重要なバロメーターとなる。

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