日本銀行が17年ぶりに利上げを実施したが、市場は大きく動揺しなかった？多くの人が慌てているが、本当に気にすべきなのは「利上げするかどうか」ではなく「どれだけ上げるか」だ。

キャリートレードというものは、率直に言えばほぼゼロコストの円を借りて、世界中の高利回り資産に投じて利ざやを稼ぐ取引だ。今回BOJが利上げを行い、借入コストが上昇したことで、本来なら売却ラッシュ——資産を売って円に換え、借金を返済する——が起こるはずだ。理屈としては正しい。

しかし、問題は「量」だ。

数兆ドル規模の円キャリートレード資金が世界の金融システムに散らばっている。これは実在する「影の流動性」だ。だが、円の金利がいくら上がっても依然としてほぼゼロで、日米の金利差は大きいままだ。大半のプレイヤーは急いで撤退する必要がない。今回の利上げは試験的な意味合いが強く、幅も緩やかで、短期的な資金回流の規模は限定的だ。市場が落ち着いているのも合理的だ。

本当に問題が起きるとすれば、今後の「量の増加」による——もし金利差が急速に縮小すれば、パニック的な資金引き上げが起こるだろう。その時最も打撃を受けるのは、まず第一波として暗号資産（仮想通貨）と高レバレッジのテック株のような、流動性に最も敏感なハイリスク資産だ。その後に株式市場の主力銘柄や高利回り債券が続くだろう。

私の見解：今回の利上げはシグナル的な意味合いが強く、一時的な変動をもたらす可能性はあるが、システム全体の崩壊には至らないだろう。本当のリスクは、今後の円高のペースと、FRB（米連邦準備制度）と日本銀行のどちらが先に「妥協」するかの駆け引きの中に潜んでいる。