最近市場が注目しているのはただ一人――ホワイトハウス国家経済会議（NEC）委員長のケビン・ハセットだ。トランプに見込まれたFRB議長候補である彼の一言一言が、市場の利下げ予想を左右し、暗号資産を含むリスク資産市場の動向に直結している。今後の金融政策の行方を知りたければ、まずはこの潜在的な舵取り役の「底牌（手の内）」を探る必要がある。

**象牙の塔から権力中枢へ**

ハセットは途中から政治家になったタイプではない。1962年生まれで、アカデミックな経歴は非常に堅実だ。スウォースモア大学で学士号を取得し、ペンシルベニア大学で経済学博士号を取得。1989年にはコロンビア大学の助教授となり、その後ビジネススクールで准教授にも昇進、ニューヨーク大学法科大学院でも講師を務めた経験がある。この年月で、経済理論と金融市場を徹底的に研究してきた。

さらに重要なのは、すでにFRB（米連邦準備制度理事会）と関わりがあったことだ――1997年以前にはFRBで上級エコノミストを務め、金融政策の運用メカニズムを熟知している。その後、保守系シンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所（AEI）に加入。ここが彼の本拠地となった。十数年にわたり、常任研究員から国内政策研究部長まで務め、税制政策が企業の意思決定や一般市民の懐にどう影響するかを専攻し、その研究成果は共和党の経済政策の参謀役となった。

彼が本格的に中枢に入る転換点となったのは、トランプチームとの協力から始まる。