日本の伝統文化である盆栽をNFT化し、世界に発信するプロジェクト「BONSAI NFT CLUB」が2025年4月に設立3周年を迎えた。限られた愛好家の間で親しまれてきた盆栽をNFTという形で所有可能にすることで、管理のハードルを下げた。デジタルとリアルをつなぐRWA(リアルワールドアセット)の取り組みにより、新しい文化継承の形を提示している。4月26日には、NFTを保有するCLUB会員ら約20人が埼玉県にある提携先の成勝園に集まり、記念イベントが開催された。盆栽師・平尾成志氏によるライブパフォーマンスが披露され、ファウンダーの間地悠輔氏は今後5年間の展望を語った。## ソニーとのコラボにつながった「BONSAI NFT GALLERY」設立以来、同CLUBは複数のプロジェクトを展開してきた。第一弾では、NFTを購入すると自宅に実物の盆栽が届く仕組みを導入。第二弾では、8031体のジェネラティブNFTを販売し、保有数に応じて「園主」「大園主」「超園主」といった称号が付与される制度を設けた。称号に応じて、オリジナル盆栽の抽選販売に参加できるなど特典が変わる仕組みになっている。〈成勝園で管理される盆栽〉2023年からは第三弾として、盆栽アートをNFTとして販売する「BONSAI NFT GALLERY」を開始した。所有権をNFT化し、実物の管理は成勝園が担う仕組みを採用しているが、これまでにイーサリアム上で販売した16作品はいずれも完売しているという。こうした成果がソニーの目に留まり、2025年1月にはソニーグループが運営するNFTマーケットプレイス「SNFT」での展開が実現。500万円の作品が即完売するなど注目を集めた。> > 関連記事:伝統文化とNFTの化学反応──盆栽NFTが示した「王道」の価値【ソニーグループのRWAプロジェクト】> > > ## 盆栽=高齢者の趣味?一般的に年配者や高齢者の趣味と見られがちな盆栽だが、この日は20代や30代の若者の姿が目立っていた。現在、アート盆栽3点を所有する20代の男性ホルダーは、ブロックチェーンやNFTという新しい技術への興味が購入のきっかけだったと明かした。「高価な盆栽を自分で管理するのは難しいが、プロに任せられる安心感がある」と話し、NFTと現物資産(RWA)を結びつける仕組みに面白さを感じたことで、2022年のプロジェクト初期から関わっているという。他の参加者と交流するうちに、盆栽そのものへの理解と愛着も深まった。今では、鉢の代わりに自然石を使う「石付き盆栽」が一番のお気に入りだと笑顔を見せた。〈成勝園には、大小さまざまな盆栽が並ぶ〉同CLUBでは、盆栽の預かり費用は無料。もともと、育成や管理を専門家に委ねる「預かり文化」が根付く盆栽の世界では、所有と管理を分けることに対する抵抗感は少なかったと言える。そこに着目し、NFTを活用して所有者を明示し、譲渡可能なデジタル証明として仕組み化した点が「BONSAI NFT GALLERY」の特徴だ。従来は盆栽を預ける場合、園主が所有者を把握していても、第三者にはそれがわからず、所有の実態は園主と依頼主の間に閉じていた。NFTによって所有者をパブリックに可視化することで、完全とは言えずとも、これまでに比べて透明性の高い所有構造が生まれた。〈OpenSea上で行うことができる二次流通(キャプチャ)〉仮に手放す場合も、NFTを譲渡することでスムーズに取引できる可能性があり、保管場所に縛られることもない。所有権の二次流通は、世界最大のNFTマーケットプレイス「OpenSea」上で行うことができる。## 盆栽から挑む世界のアート市場この日は平尾氏によるパフォーマンスに続き、「BONSAI NFT CLUB VISION 2030」と題した間地氏の講演も行われた。伝統文化を現代的なアプローチで再構築するカルチャーイノベーションという理念を掲げ、今後の展望を語った。〈間地氏とタッグを組む平尾氏、参加者が見守るなかライブパフォーマンスを行った〉間地氏は、初期購入者によるリセールを促し、二次流通を活性化させることで市場への再投資と継続的な成長を目指すと説明。今後は美術館やアートフェアなど、既存の流通網への展開を加速させる考えも示した。また、2050年には世界のアート市場が15兆円規模に達するとの予測を引き合いに、盆栽にとどまらないカルチャーイノベーションを通じて、その10%(1.5兆円)に相当するシェア獲得を目指すと語った。将来的には、盆栽以外の他のアート領域への活動も広げていく構想だ。「BONSAI NFT CLUB」は設立から3年でソニーとの共創を実現し、アート市場全体への展開を打ち出すなど着実な実績を重ねてきた。とはいえ、間地氏が掲げる世界のアート市場に一石を投じる構想の実現には時間がかかるだろう。伝統文化を新たな文脈で根付かせる挑戦から、今後も目が離せない。
預かり文化×所有の可視化、BONSAI NFT CLUBが描く新しい文化継承の形──設立から3年、世界のアート市場に挑戦へ | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)
日本の伝統文化である盆栽をNFT化し、世界に発信するプロジェクト「BONSAI NFT CLUB」が2025年4月に設立3周年を迎えた。限られた愛好家の間で親しまれてきた盆栽をNFTという形で所有可能にすることで、管理のハードルを下げた。デジタルとリアルをつなぐRWA(リアルワールドアセット)の取り組みにより、新しい文化継承の形を提示している。
4月26日には、NFTを保有するCLUB会員ら約20人が埼玉県にある提携先の成勝園に集まり、記念イベントが開催された。盆栽師・平尾成志氏によるライブパフォーマンスが披露され、ファウンダーの間地悠輔氏は今後5年間の展望を語った。
ソニーとのコラボにつながった「BONSAI NFT GALLERY」
設立以来、同CLUBは複数のプロジェクトを展開してきた。第一弾では、NFTを購入すると自宅に実物の盆栽が届く仕組みを導入。第二弾では、8031体のジェネラティブNFTを販売し、保有数に応じて「園主」「大園主」「超園主」といった称号が付与される制度を設けた。称号に応じて、オリジナル盆栽の抽選販売に参加できるなど特典が変わる仕組みになっている。
こうした成果がソニーの目に留まり、2025年1月にはソニーグループが運営するNFTマーケットプレイス「SNFT」での展開が実現。500万円の作品が即完売するなど注目を集めた。
盆栽=高齢者の趣味?
一般的に年配者や高齢者の趣味と見られがちな盆栽だが、この日は20代や30代の若者の姿が目立っていた。
現在、アート盆栽3点を所有する20代の男性ホルダーは、ブロックチェーンやNFTという新しい技術への興味が購入のきっかけだったと明かした。「高価な盆栽を自分で管理するのは難しいが、プロに任せられる安心感がある」と話し、NFTと現物資産(RWA)を結びつける仕組みに面白さを感じたことで、2022年のプロジェクト初期から関わっているという。
他の参加者と交流するうちに、盆栽そのものへの理解と愛着も深まった。今では、鉢の代わりに自然石を使う「石付き盆栽」が一番のお気に入りだと笑顔を見せた。
従来は盆栽を預ける場合、園主が所有者を把握していても、第三者にはそれがわからず、所有の実態は園主と依頼主の間に閉じていた。NFTによって所有者をパブリックに可視化することで、完全とは言えずとも、これまでに比べて透明性の高い所有構造が生まれた。
盆栽から挑む世界のアート市場
この日は平尾氏によるパフォーマンスに続き、「BONSAI NFT CLUB VISION 2030」と題した間地氏の講演も行われた。伝統文化を現代的なアプローチで再構築するカルチャーイノベーションという理念を掲げ、今後の展望を語った。
また、2050年には世界のアート市場が15兆円規模に達するとの予測を引き合いに、盆栽にとどまらないカルチャーイノベーションを通じて、その10%(1.5兆円)に相当するシェア獲得を目指すと語った。将来的には、盆栽以外の他のアート領域への活動も広げていく構想だ。
「BONSAI NFT CLUB」は設立から3年でソニーとの共創を実現し、アート市場全体への展開を打ち出すなど着実な実績を重ねてきた。とはいえ、間地氏が掲げる世界のアート市場に一石を投じる構想の実現には時間がかかるだろう。
伝統文化を新たな文脈で根付かせる挑戦から、今後も目が離せない。