ステーブルコインが変える日本の送金・決済の未来──有望ユースケースを徹底予測【N.Avenue club 2期10回ラウンドテーブル・レポート】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

ステーブルコインが変える日本の送金・決済の未来──有望ユースケースを徹底予測【N.Avenue club 2期10回ラウンドテーブル・レポート】

法定通貨、特に米ドルと連動するステーブルコインは、ブロックチェーン技術が生んだ最も実用的なアプリケーションの一つで、「USDC」が市場参入した日本においても、日本円に連動したステーブルコインの登場、そのユースケース創出などへの期待が膨らんでいる。

ステーブルコインはこれまで、暗号資産の取引や、金融インフラが整っていない国々での決済手段として活用されてきている。

ただ、日本は銀行口座の普及率が非常に高く、金融規制も整った先進的な市場であり、電子マネーやクレジットカードなど、キャッシュレス手段も広く受け入れられている。そんな日本で、ステーブルコインがどのようなユースケースを生み出し、生活やビジネスを豊かにしてくれるのか?

Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、法人会員制の国内最大Web3ビジネスコミュニティであるN.Avenue clubは4月24日、ステーブルコインが日本市場にもたらすインパクトと、有望なビジネス活用の可能性について深掘りした。

「N.Avenue club」は国内外のゲスト講師を招いた月1回の「ラウンドテーブル(研究会)」を軸に、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」などを通して、日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指している。

N.Avenue clubのラウンドテーブルは、会員のみに向けたクローズドなイベントのため、ここではその一部をレポートする。

ステーブルコインが変える日本の送金・決済の未来

冒頭、CoinDesk JAPAN編集長の増田隆幸がステーブルコインの現状をブリーフィング。ステーブルコインの市場規模については、時価総額が2291億ドル(32.8兆円)規模であることや、月間の取引高も2兆ドルを超えること、銘柄シェアとしてはテザーが発行するUSDTが最多で、USDCなどが続くと説明した。

〈CoinDesk JAPAN編集長の増田隆幸〉また国内の最近の動きとして、3月に行われた「FIN/SUM 2025」で井藤英樹金融庁長官がステーブルコインの取引業を認可したと発表してから動きが加速したように感じると解説。日本ではSBI VCトレードが第1号の「電子決済手段等取引業者」となったことを皮切りに、メガバンクも動きを活発化させていると述べた。

このほかにも、各社の動きとして、PayPalの利回り付ステーブルコイン、オランダINGグループやフィデリティなどの動向を紹介。ブリーフィングの最後には、米大手決済サービスであるビザ、マスターカード、PayPalの取り組みを整理して解説した。

国産ステーブルコインの勝ち筋

メインセッションでは最初に、セキュリティ・トークン(ST、デジタル証券)やステーブルコイン(SC)の発行基盤を提供するProgmat(プログマ)の代表取締役 Founder and CEOの齊藤達哉氏が登壇。同社が手掛けるProgmat Coinは、ステーブルコイン発行用のSaaSとして、発行体などを限らず利用できるインフラだ。

〈Progmat(プログマ)の齊藤達哉氏〉齊藤氏は、国内で取り扱いが始まった海外ステーブルコイン(外国電子決済手段)ついて説明し、当面、ユースケースの中心になるのは「暗号資産取引」×「リテール」だろうと述べた。

また国産ステーブルコインの勝ち筋を考える際、軸となるのが「決済の対象が何か」(ブロックチェーン上かどうか)と「決済範囲がどうか」(限定的か広域か)で、まず浸透すると考えられるのは、ステーブルコインを使う「必然性」と「ホワイトスペース」のあるところと指摘。具体的には、暗号資産、セキュリティ・トークン(ST)/ユーティリティ・トークン(UT)など、決済対象がブロックチェーン上の取引である分野で、決済範囲は限定的か国内外広域かを問わないと説明した。これに対し、決済対象が「ブロックチェーン外」の取引の場合、既存のインフラと競合するため、置換コストを上回るメリットが必要だとの見解を示した。

なおProgmatは、Swiftと連携して従来の海外送金フロー/UIを活かしながら、グローバルなステーブルコイン送金を実現する「Project Pax」や、集中清算機関の維持コストなく、決済リスクの「極小化・全自動化」を実現する「セキュリティ・トークン(ST)×ステーブルコイン(SC)」(オンチェーン完結化)、「トークン化MMF」などに取り組んでいる。さらにAIエージェントとプログラマブル・ネットワークによるオンチェーン完結のトークン化金融を目指したいと述べた。

オリコがUSDC払いできるクレカに取り組む理由

次にプレゼンしたのは、オリエントコーポレーション(オリコ)のManager、秋山寛勝氏だ。クレジットカードの発行やローンなどを提供しているオリコは、Slash Fintech Limitedなどと組んで、国内初、USDCでの支払いができるクレジットカード「Slash Card」の発行に取り組んでいる。

〈オリエントコーポレーションの秋山寛勝氏〉Slash Cardは国際ブランドにVISAを活用、200以上の国・地域にある1.3億のVISA加盟店で使えるようになると述べ、この取り組みの目的は、多様化するニーズに応えるユースケースを作ること、デジタル・トークナイゼーションが進む現状をいち早く捉えた商品をリリースすることなどだと説明した。

秋山氏は、プロジェクトの最大の課題はAML/CFT対応で、また社内での合意形成においては、「ステーブルコインとは何か」を理解してもらうところから始めたと述べた。

なお自社の役割を「マスアダプションの一翼を担うこと」と語った秋山氏は、同社の今後の戦略として、Slash Cardの発行を足掛かりに、Web3領域への参入、自社経済圏を対象としたブロックチェーンやステーブルコインの活用を進めることと説明した。

ATMでのNFT配布、小売流通でのSC活用のPoCを経たセブン銀

最後にセブン銀行 セブン・ラボ調査役の山方大輝氏が登壇。同社は2022年~23年に、小売・流通でのステーブルコイン活用のPoCや、ATM募金の利用者にノベルティとしてNFTを配布する取り組みを行った。

〈セブン銀行の山方大輝氏〉PoCについては、効果はあったものの苦労が多かったといい、例えば、ブロックチェーンとステーブルコインを利用して商品を納入しても、返品依頼、訂正伝票などが手打ちの書類で来てデータに乗ってこないなど、周辺のシステム理解・調整が課題であることが分かったと振り返った。

ATMを活用した募金については、暗号資産交換業にあたらないスペースを見つけて、ノベルティとしてNFTを配布。実績の金額は非公開だが、通常のATM募金に比べて、件数で約6倍、1人当たり募金額が約12倍などと大きかったと話した。

ステーブルコインについては、「リテール」でユースケースが生まれる可能性はあると見るが、ステーブルコインを使うこと自体を目的にはしないと述べた。また「ホールセール」では、資金運用収益・役務取引等収益とイールドファーミングの可能性をあげたが、現時点ではまだ具体的にはなっていないと明かした。

ステーブルコインは日本でどう普及するか?

ラウンドテーブル・レポートの後半は、参加者全員が6つのテーブルに分かれてディスカッション。掲げられたテーマは「ステーブルコインは日本でどう普及するか」で、熱く議論を交わしていた。

各テーブルからは「何をもって普及とするのか」「ステーブルコインの利用シーンをより具体的に考える必要がある」「そもそも普及させる必要があるのか」といった意見の提示があったほか、リテールとホールセール、資産運用と決済・送金などに区分けしたうえで、それぞれの場面で、どういった強み、使われ方が考えられるのか、具体的なアイデアも飛び出していた。

N.Avenue clubは、国内外のゲスト講師を招き毎月、開催している「ラウンドテーブル(研究会)」を軸に、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」などを通して、日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指す会員制のコミュニティだ。N.Avenue club事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。

|文:瑞澤 圭
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:多田圭佑

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