イーロン・マスク氏の報酬プランが発表され、トレーダーたちはテスラ株式の取引ではなく、関連するトピックを探し出すために予測市場で積極的にリサーチしています。

このようなトレーダーにとって、ひとつのニュースが即座に多様な予測テーマを生み出します。たとえば「世界で最初のトリリオネアは誰か」「マスク氏はいつ1兆ドルを突破するのか」「今四半期のテスラの時価総額の行方」「最初にロボタクシーが導入される都市はどこか」といった話題です。

こうした現象が、予測市場を利用するトレーダーの日常にほかなりません。各ニュースごとに複数のテーマや取引機会がさまざまな予測系プラットフォーム上で生まれています。

現在、トレーダーはPolymarket、Kalshi、Limitlessなど複数のプラットフォームを横断して関連市場を探し、オッズや価格変動を比較・監視しなければなりません。

1つのニュースイベントによって、現在の予測市場が抱える課題が浮き彫りになっています。

ニュースと関連する予測市場が自動で紐づけられれば、取引効率は劇的に向上します。一方、記事公開直後に論点を瞬時に抽出できれば、勝率の向上にもつながります。

多数のプラットフォームが並立する状況は、トレーダーにとって前例のない挑戦です。ベストなオッズを求めて複数サイトを巡り、アービトラージを狙って価格差を監視し、市場動向の把握のために情報を継続的に追い続ける必要があります。

この情報の断片化は、時間と労力を浪費するだけでなく、トレーダーの最適な意思決定を妨げる要因となっています。

取引高はミームコインに迫る一方、情報ノイズはさらに深刻

今年初頭のミームコインブームをご記憶でしょうか。

2024年には、Pumpfunローンチパッドが急上昇しました。

新規コインが矢継ぎ早に市場を席巻し、市場規模は急拡大。新プロジェクトを手動で追いかけることは現実的でなくなり、トレーダーたちは一気に情報過多に陥りました。この混乱のさなか、トレーディングボットや集約プラットフォームが現れて、情報を選別し、チャンスを特定し、複雑な取引ワークフローを簡素化する役割を果たしました。

現在、予測市場でも同様の現象が起きています。9月8日には、予測市場の取引高が1日で2億7,000万ドルに達し、そのうちKalshiが8割を占めました。これはSolana全体のミームコイン取引量の38％に相当します。予測市場は急成長しており、ミームコイン分野へと挑戦を始めています。

予測市場のプラットフォームが増える中、情報過多という課題が再びトレーダーの前に立ちはだかっています。

供給が人間の処理能力を超える段階では、集約ツールや自動化ツールは必須の存在になります。この流れは急成長する暗号資産エコシステム全体で共通して見られるものです。

予測市場はまさにこの変革点に差し掛かっています。

大手が熾烈な競争、新規参入も続々と登場

予測市場の活況はここ数か月で一層際立っています。

2024年5月、米商品先物取引委員会（CFTC）がKalshiに対する控訴を撤回。同月にKalshiはUSDC、RLUSD、SOL、BTC、WLD、XRPといった暗号通貨での入出金に対応し、ユーザーに多様な入金手段を提供しました。6月にはParadigm主導でシリーズC資金調達を実施し、1億8,500万ドルを調達。評価額は20億ドルに達し、正式にユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

一方、Polymarketも評価額10億ドル超で2億ドル規模の資金調達を進めている模様です。両社とも多額の資金を集めていますが、Polymarketは米国事業で苦境に立たされてきました。2022年、CFTCはPolymarketに対し、未登録バイナリーオプション市場の運営を理由に140万ドルの罰金を科し、米国ユーザーへのサービスを制限せざるを得ませんでした。

Polymarketが2024年米大統領選の結果を的中させて注目されると、8日後にはFBIが創業者Coplan氏のPCおよび携帯を押収。その後、トランプ政権下で調査は打ち切られ、Polymarketは米国再進出の「リターンチケット」となるQCEXを取得し、9月4日にはCFTCより正式な事業再開が認められました。

規制緩和と潤沢な資金により、予測市場成長の基盤が固まりました。

現在、競争環境は静かに様変わりしています。Kalshiは暗号アセットKOLのJohn Wang氏をHead of Cryptoとして迎え、業績が大幅に改善。8月25日以降は週単位の取引高でPolymarketを上回り、両者の競争は一段と激化しています。

巨頭同士の競争が進むなか、新規参入も続々と登場しています。MyriadMarkets（Rug RadioおよびDecrypt MediaのFarokhによる設立）、Truemarkets、HedgehogMarket、DriftProtocol、Limitlessなど、次世代のプラットフォームが市場参入の準備を進めています。

予測市場は急速な再編の渦中にあり、各プラットフォームは成長市場でのシェア獲得を競っています。

ミームコインブーム時に登場したBananabot、GMGN、Axiomなどの集約ツールと同様、予測市場分野でもアグリゲーターの需要が急速に拡大しています。

アグリゲーター：初期段階のプロトタイプが登場

冒頭で指摘した課題に対し、一連の革新的ツールが生まれつつあります。多くはベータ版ですが、すでに大きな可能性を示しています。

@rileyxcook氏は、複数プラットフォームのオーダーブックをリアルタイム表示し、Kalshi、Limitless、Polymarket間の類似市場を自動でマッチングする「monitorthesituation.lol」を開発。トレーダーが即座に価格差を特定できるよう支援します。

Verso Tradingは、重複するニュース見出しをひとつのイベントに統合し、影響度や関連性スコアを可視化する次世代型ニュースエンジンを構築。どのニュースがKalshiのコントラクトに本当に影響するかが分かります。今後、ニュースやツイートが市場に影響を与えそうな際に即時通知する低レイテンシーのリアルタイムアラート機能も実装予定です。

わずか16歳のエンジニア@agpkeleta氏は「Aerospace」を開発。リアルタイムニュース通知と、アルファ情報および関連市場の精緻なマッチングによって、市場決着前に素早くチャンスを見出すことを実現します。現時点ではPolymarket対応、今後Kalshiにも対応予定です。

これらのツールはすべて、ニュースと関連する予測市場を一元的に結びつけ、複雑な取引を可能にするというコア課題を解決するためのものです。開発は初期段階ですが、すでにアグリゲーターの有用性を示しています。

今後の展望：より大きな成長機会が到来

市場にギャップが生じると、必ず新たなチャンスが生まれます。

予測市場アグリゲーターの出現は偶然ではなく、エコシステムの発展がもたらした必然です。

健全なエコシステムの発展には、多様なインフラが必要不可欠です。ミームコインブームの際もそうでしたが、基盤資産が成熟すると、ツールや分析基盤、自動化ソリューションが一気に拡がり、やがて完全な市場サイクルが形成されます。

予測市場はいま、まさにこの転換点に差し掛かっています。

プラットフォームの増加とユーザー層の拡大に伴い、専門的なツールへの需要も継続的に高まっていくでしょう。

アグリゲーターは、その最初の一歩にすぎません。

今後は、クロスプラットフォーム型のアービトラージボットやAIによる市場分析ツール、機関投資家向けリスク管理システムなど、さらなるイノベーションが登場するとみられます。予測市場は単なる「賭け」から、プロフェッショナルなツールと緻密な分析を求める複雑なトレーディングエコシステムへと発展しています。この変革を支える中核インフラを担うプロジェクトこそが、次世代エコシステムの要となるでしょう。

なお、本記事では予測市場の将来についてAIにも見解を求めました。AIの予測は以下の通りです。

短期（6～12か月）：

• アグリゲーター同士の競争が始まる
• Polymarket・Kalshi両社が同一イベントに類似市場を展開し、プラットフォーム間で激しい価格競争が繰り広げられる
• 新規プラットフォームが人気市場を模倣し、同質化が加速する

中期（1～2年）：

• API統合が標準となり、優れたアグリゲーターが登場することでプラットフォームはAPI機能向上を迫られ、改善が進まない場合はユーザー離れが起こる
• 機関投資家が参入し、ヘッジファンドやクオンツチームが予測市場アービトラージを積極活用。リテールトレーダーの優位性は縮小
• 縦割りの専門分野型予測市場（スポーツ、政治、暗号資産等）が勃興し、総合型プラットフォームは多様化へ

長期（3～5年）：

• 主流プラットフォームが2～3社に集約され、他社は統合や撤退へ
• アグリゲーターが包括的ゲートウェイ化し、主導的なアグリゲーターは自社マーケットローンチなど市場運営も手がける
• AI主導の予測が主流となり、AIが自動でニュース・SNSデータを分析してベッティングに活用する流れになり、手動による予測はニッチな活動となる

最も野心的な予測として、将来の予測市場アグリゲーターは現代の証券ブローカーのような存在となり、価格発見機能に加えてレバレッジ、オプション、ポートフォリオ投資ツールを提供するようになるでしょう。その時、予測市場は成熟した金融資産クラスへと進化しているはずです。

どの予測が最も現実的か、ぜひ皆様ご自身でご検討ください。

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